第2話:親父の名前は信夫です。

 じいちゃんは信夫(親父)が高校時代に胃がんの為志半ばで亡くなります。

 (だもんで私はじいちゃんに会ったことがありません。)

 じいちゃんもばあちゃんも連れ子同士の再婚だった事もあり、すでに高齢で

 した。

 信夫は次男でその上に歳の近い兄の周一(しゅういち)が長男でいました。

 当時は好景気であり、めずらしいマネキンリース事業は業績もよく、周一は

 イケイケでじいちゃんのあとを継ぎ末広マネキンを盛り立てようとします。

 

 「俺が営業をするから、おまえは配送をやってほしい」

 大学を出た信夫は東京の繊維問屋に3年ほど就職していましたが、信夫は

 兄貴にそう頼まれ、その兄が怖かった信夫は断るに断れなかったのでした。

 信夫は神戸に帰ってきて兄貴と二人で末広マネキンを盛り立てようとしてい

 た矢先、再び悲劇が岩田家を襲います。

 信夫の兄の周一が脳溢血で34歳の若さでこの世をさります。

 亡くなる少し前に三宮の飲み屋で他のお客さんと喧嘩になり、ビール瓶で

 殴られていた。とかいう証言も後に出てきましたが、因果関係は不明のまま

 あっさり亡くなり、事件でも事故でもなく処理されました。

 信夫は逡巡します。

 「自分は商売には向いていない。」

 末広マネキンをたたんで再び就職をしようかと考えていました。

 でもそこに信夫の母親「美津枝」が「我が家や兄の家を助けてほしい」と

 最後に残された信夫に末広マネキンと岩田家の行く末を託します。

 

 短期間で2度のリーダーを失った末広マネキンはその後ゆるやかな安定経営

 の道を突き進んでいきます。

 

 (次号につづく。。。)